親と話した

9月22日 22:05
一人暮らしを始めて半年が過ぎた。親とはそこそこの頻度でテレビ電話をする。大学がまだオンライン中心だという話をしたら、「もう帰ってきたら?」と提案があった。「いや、友達もいるしバイトもあるから…」と断る。両親は「まぁだよね」と笑って流した。 「そろそろ就活とかも考えるの?」 「どうだろ、俺、もしかしたら会社勤め向いてないかも」 友達からインターンや就活しているみたいな話を聞いて、どこかに所属するということに向いてない俺は尻込みしている。 「じゃあ院は?」 「院かー…」 俺はまだ煮え切らない。勉強が苦手なわけじゃない。ただ院に進んだところで自分の道が開けるのか、漠然とした不安がある。 「行きたくないの?」と父親。 「遠慮してるんだよ、お金とか。ねぇ?」と母親。 現役の頃は国立を目指し、浪人で私立に変えたので金の問題も頭にあった。ドラ息子なのであまり迷惑をかけたくないし、なんとなく頼みにくい。俺は「うん…」と頷く。 「でも何か目標が無いと東京にいる意味がないよ」 父親の言葉はいつも正しい。親元からちゃんと離れて初めてわかった。口が悪い人だから口喧嘩もよくしてしまっていたけれど、意地とかそういうのを取っ払ってしまえば、素直に受け入れてしまえる。 「じゃあどこか大人がいるところで働いたら?」と母親の提案が入る。母親はワインエキスパートとというソムリエの一個下みたいな資格を持っていて、今はデパートでワイングラスを売る仕事をしている。 「最近『神の雫』っていう漫画が面白くてね。ワインの勉強してみたら?大人と話す時役に立つよ」 そこから話が段々俺がワインバーで働くという方向に行き始める。でもそういう世界に憧れはあったので悪くないかも、という気分になってきた。 「大人の世界に接して人脈を作ってみたら?結局人生で一番の財産は人脈だから。いざとなった時助けてくれる人の数がその人の価値だよ」 両親が昔から言っていたことだ。コロナになって余計に高校時代からの友人との交流が楽しい。お互いに愚痴って励まし合っている。本当にその通りだと思っている。 「でもそういうところで働くなら、余計にちゃんとした目標を持っていないと。夜の世界は楽しくて楽だから簡単に流されちゃうよ」 父親が言う。 「院に行くとか就活とかなんでもいいけど、しっかりとした芯を持っていないとだめだよ。そういうものを持ってくれるなら応援するよ」 両親との電話が終わって、あー俺はほんとにドラ息子だな、と思った。迷惑かけっぱなしだ。悪いな、ごめんなさい。今まで何度も謝ってきたけど、その度に「いいよそんなの」って断られてきた。現役の頃受験で失敗した時も、寮に入るかどうかで揉めたことも、思い返してみれば反発してばっかりで、親には妥協してもらってばかりだった。それでもまだ一人暮らしさせてくれて応援してくれるってなんなんだよ。 ため息が出る。 真っ当に生きなきゃなと痛感する。真っ当に生きることが自分にできる親孝行だと思った。今更だけど、親だけは悲しませたらダメだ。 こんなこと恥ずかしくて親には言えないのでここに供養します。
35
15 Comment
Post information
28 posts21 followers
Logo
There are 10 posts every day
15 comments
Female
立教大学
オーミヤさん!!
Female
青山学院大学
素敵なご両親ですね!
Male
学習院大学
にしても文才。
Female
慶応義塾大学
本当にそれ 読むのが面白かった 何度も謝ってるって感謝の気持ちがすごい伝わってくる。めちゃくちゃ良い息子じゃないですか
Male
中央大学
オーミヤさんの文章めっちゃスッと入ってくる 結構量あるのに
Male
東京大学
ほんとにそうですよね〜 そのうち親孝行はぜったいしなきゃだけど、まずは自分がしっかり自立して、 心配させたり悲しませたりしないことだなあー
Male
青山学院大学
小説家目指されては?
Female
上智大学
読んでいて面白いので物書きになったらいいと思います!
Female
法政大学
親孝行ってどうすればいいんだろうって最近考え始めたからなんか沁みた...
Female
中央大学
国語の教科書かと思った
Female
早稲田大学
読みやすいし、もっと読みたいって思わせてくれる文章です…
Female
お茶の水女子大学
素敵なご両親ですね、大切になさってください。
Male
東京大学
全然ドラ息子だと思わないよ
Male
学習院大学
オーミヤーさん!!
Male
中央大学
まず、テレビ電話できる関係性がうらやましい