「生きる」を見た

2021年9月15日 13:05
こないだ、「生きる」っていう映画を見た。黒澤明の映画の一つで、たしか五十年代くらいだった気がする。画面は白黒で、音声も聞き取れないところが所々あったけどそれが気にならないくらい面白かった。 主人公は市役所の課長さんで、彼が胃がんを宣告され、余命がわずかしかないことが分かるところから話が始まる。 当時、市役所では事なかれ主義、縄張り争いが横行していた。市民が何かしてくれと頼んできても、様々な部署や会議にたらい回しにされ、有耶無耶になってしまう。そんな市役所の中で昇進する方法は、何もしないこと。ただ回ってきた書類にサインするだけの日々。そんな中突然「死」が現れ、主人公は今までの退屈な人生を取り戻すために遊び歩く。酒を飲んだり、パチンコに行ったり、ストリップショーを見たり。しかしどうにもしっくりこない。遊び歩いていることを息子夫婦に怪しまれ、自分たちに遺産を残さないつもりだと責められ途方に暮れる。 ある時、主人公の課に属していた新人の女の子が退職した。彼女は生命力に溢れていて、常に楽しそうに生きている。 「どうして君はそんなに楽しそうなんだい」 と聞くと、彼女は 「だって生きることって楽しいじゃない」 と言う。彼女は玩具屋の工場で働いていて、 「何かを作るって楽しいことよ。あなたも何か作ってみたら?」 主人公はその言葉を聞き、仕事に復帰する。 主人公は死に、場面は葬式に移る。お悔やみの言葉もそこそこに、参列していた人々は完成した市民公園に貢献した上司におべっかを使う。何々課の誰々さんのおかげだの、あれそれ先生の説得のおかげだの。市民公園は度々市民から作ってくれと頼まれていたが、たらい回しにされていたものの一つだった。 何故それが実現したのか。そういえば主人公がやたら張り切っていた。自分の死を分かっていたからか。主人公は誰にもがんになったことを告げていなかった。いや、しかし一課長程度が何かしたところで市民公園などできるわけもない。やはり誰々のおかげだ。 しかし次々と主人公の行動が明らかになる。他課に頭を下げて頼んでいた。現地に行って調査をしたり、周辺の住民に話を聞いていた。市議会議員に直接頼みに行った。その土地を支配してるヤクザから脅されていたが屈さなかった。工事がスムーズにできたのも、縄張り意識が高い他部署が連携できたのも、主人公が尽力した成果だと分かってくる。 そこに一人の警官が来る。主人公の遺体を発見した人物だ。警官は、息を引き取る前の主人公を見ていた。主人公は、雪がしんしんと降る中、ブランコに乗りながら、 「命短し、恋せよ乙女…」 歌いながら、自分が完成させた公園を見つめていた。それがとても嬉しそうで、楽しそうで、声をかけられなかったと言う。彼はブランコの上で死んだ。 世辞がいつしか主人公への賛辞に変わる。そもそもどうして公園を作るのがこんなに遅かったのか。それは市役所の事なかれ主義のせいだ、縄張り意識のせいだ。主人公はそんな慣例を打ち破った。主人公は立派に生きた証を残した。我々も彼に続かねばならない!葬式は大盛り上がりとなった。 翌日、市役所はいつも通り、市民の陳情はたらい回しにされ、他部署同士は縄張り争いをして、事なかれ主義が横行していた。何も変わらない。一人の人間が死んでも。 ただ、市民公園では子供たちが楽しそうに遊び、ブランコが揺れていた。
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一橋大学
どうやってみたんですか??
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立教大学
これ有名だよね
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明治大学
なんか、すごく深かった…
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上智大学
全部読んでストーリー知っちゃったけどみてみたくなった
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上智大学
ラスト、ほんとそうなんだろうなって感じの終わり方なんだね
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法政大学
自分も黒澤明監督の作品好きです
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早稲田大学
なんか時代って感じだけど、実際役所とかって今もこうだったりすんのかな
B1 アマプラで課金して見ました。アスファルト舗装されてない道路とか当時のパチンコとか喫茶店とかも興味深かったです
B5 本編はこんな駄文より五億倍面白いので是非
Male
立教大学
知らぬうちにネタバレされねてた😲